あれ、もう夕方ですか?
非常識を更新しようと思ってたのにしてないなァ…夕飯食べたらやります、たぶん。
きっとねSS書いて満足してたんですよ。思っていたよりも順調に書けたのでそれで調子よくしてました。
甘いのかな、甘くないのかな。ま、とにかく。
誕生日おめでとう、ラビ!という事で。
続きからどうぞ。
UNDER THE SUN
燦々と降り注ぐ太陽を遮る為にひさしを作るようにして手を翳した。けれど、私の小さな掌では全てをかばう事はできなくて。指の隙間から漏れる陽射しに目を細めた。
「眩しい」
拙い英語でポツリ。私の母語は日本語だ。少し前に英国にきて、それから英語を学び始めた。
もっと小さな頃から習っていればこんなにも苦労する事はなかったのだろう。しかし英国にくる事など予期していなかった。ずっとあの閉鎖的な国で毎日を過ごすのだと思っていた。だから――
『…言い訳でしかないよ、こんなの』
「どうしたんさ?」
ぽんと頭に手を乗せられる。私よりも大きな手だ。声も知っている。
「ラビ…お帰り」
「英語の練習してた?」
「ちょっとだけ」
ラビは私の為にゆっくりと話してくれる。ラビが私に英語を教えてくれている。ラビが私を見出してここに連れてきたから。
それでも彼の顔を見るのは久しぶりだ。私の事にかまけている訳にも行かない。彼だって任務に行く義務がある。
そういう機会は今までにも何度かあって、その度にラビは私に課題を課していく。簡単なものだけど。そう、例えば自分で食事の注文をする、とか。(ジェリーさんもグルになって前に並んでいる人と同じ事を言ってはいけない事になっているのだ)
「じゃあ、昼飯のついでにその成果でも教えてもらうさ」
「あまり変わらないよ」
私が苦笑いをすると、知ってるさ、とラビは言った。毎回の事で今更だけど、ちょっと酷い。
「それで朝飯は何食べたんさ?」
「ご飯と納豆と味噌汁」
「相変わらずそのメニューだな」
「朝くらいは日本のもの食べたいから」
あとはラビがいない間どんな事をしていたとか、そんな話。何と言っていいのか解らない時や語彙がない時は単語で言ったり言葉を詰まらせたりするけれど。ラビはきちんと聞いて相槌を打ってくれる。
外からゆっくり歩きながらゆっくり話しながら、ようやく食堂に着く。
「ジェリーさん、こんにちは。タマゴサンドとハムサンドをお願いします。あと、アレも」
「俺もサンド、2人前で。で、アレって?」
「えっと、内緒」
ラビは不思議そうな顔をしたけれど、秘密のままで席に着いた。アレは頃合いを見計らってジェリーさんが持ってきてくれる事になっている。
何とかそれから話題を逸らして、ここに来るまでと同じように他愛のない話をする。今度は、ラビは聴き役だけではなくどんな任務だったとか、今まで行った国の話をしてくれる。
そして遂にその時がきた。
「さ、お待ちかね!」
そう言ってジェリーさんはテーブルの上にどーんとそれを置いた。
「え、ケーキ…?」
「今日が誕生日だって聞いたから…おめでとう、ラビ」
アレ、というのはケーキの事。ラビが任務に行ったその日にリナリーが教えてくれたのだ。
それで日頃のお礼も込めてケーキを作ろうと思った。
結果から言うとアレは私ではなくジェリーさんが作ったのだけど。ケーキなんて作った事ないし専門的な単語を使って説明されても殆ど理解できなかったからだ。その代わりにデコレーションは一生懸命頑張った。そういう意味では私も作った事になるのかな。
「この子、とっても一生懸命だったのよ」
「ジェリーさん!言わないって約束!」
ラビが未だ驚いた顔で私を見る。一気に恥ずかしさが溢れる。顔から火が出そうだ。
顔を上げられずに俯いてと頭の上に何かが乗せられた。いや、知っている。ラビの手だ。
恐る恐る顔を上げる。
「ありがとさ」
ラビは太陽のような笑みを浮かべていた。
照れくさくなって小さな声で「誕生日、おめでとう」ともう一度言ってまた下を向いた。
(ハッピーバースデー、ラビ!)
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